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政府の「愚民政策」とは、いったい何なのか? お答えしよう

約 6 分

「愚民政策」とは何か?

  愚民政策とは、日本人の「自分で考える力」を削ぎ、国民を統治しやすくする政策のことである。

愚民政策

人生で一番多感である十代を、学校教育等でスポイルしているのだ。  

 

新版「知の衰退」からいかに脱出するか?

大前研一  光文社  

という本がある。

分かりやすい文章で、思考停止の罠から抜け出す方法などを論じている本だ。  

大前氏は、世界的に認められた経営コンサルタント・政策アドバイザーである。 複数の企業の役員を兼任しているだけでなく、自分自身が複数の事業を営んでいる。 日本という国家や日本の人脈だけに依存せず、自立している人物だ。

執筆した本には、テレビや新聞などでは取り上げられない知識や考え方が満載である。 政治家や大企業に嫌われても平気なので、事実を書きやすいからであろう。 (勝間和代氏によると、昔、あるテレビ番組で無料テレビ電話ができるスカイプの話をしたら、その発言はカットされたそうだ。スポンサーに携帯電話の大企業がいたから、テレビ会社は自主規制したのである)  

そんな大前氏が書いたこの本に、政府の「愚民政策」について書かれているところがあるので、引用しよう。

 

「愚民政策=偏差値導入」が日本人を劇的に変えた
日本で、詰め込み教育、受験一辺倒教育、偏差値による選別教育が始まったのは、60年安保・大学紛争以後である。 いま思えば、あそこが日本にとって分水嶺だった。
日米安保が大問題であった時代、日本政府は、過激な学生運動に対して非常に強い危機感を持った。 このようなムーブメントを放置してしまうと政権転覆も起こりかねないと考えた政府は、ここから国民教育を「愚民政策」に転換した。 その象徴が「偏差値教育」である。  
かなり昔のことになるが、私は当時の首相に言ったことがある。 「いまの政府は国民を騙すようなことばかりやっている。 このままだと、国民は怒りを覚えて立ち上がるでしょう」 と、このように進言したのだが、首相は私にこう言った。 「大前さん、わが国は愚民政策を施しているから大丈夫だよ」
まさかと耳を疑ったが、これは事実である。
当時の日本の政治指導者と役人たちは、学生たちが政府にたてつくことがないように愚民政策をとっていると確かに認識していたのだ。 日本政府は安保闘争のようなことが二度と起こらないように、若者たちがけっしてアメリカに刃向かわないように、そして、体制が転覆する事態が起こらないようにと、愚民政策を実施した。
これは、天安門事件後の中国と同じだ。 政府にとって危ないことを考えない、天下国家を論じない、そういう小市民をたくさんつくるという政策である。 その象徴が、1970年代半ばに導入された「偏差値制度」なのだ。
そして・・・この政策は予想以上の効果を上げ、長年の愚民政策によって、その後の日本人はみごとに”考えない国民”になってしまったのである。

 

大前氏のように、首相の「愚民政策を施しているから大丈夫」発言を本に書ける人は、なかなかいない・・・。  

私の中学・高校時代、「人生をより良く生きるには?」「今の日本の政治は・・」「○○という学者が書いたこの学問の本は凄いぞ」なんてことを語れる雰囲気は、なかった。 家でも、近所の大人とも、学校でも。

世間話、軽い話、笑い話、遊びの話、テレビ番組や音楽・漫画などを話題にして、楽しく会話するのが暗黙のルールだった。  

小さい頃からずっと続いている私の趣味は、読書である。 いろんなジャンルの本を読んだ。 人文社会科学の学術書・学問書もよく読んだが、ほとんどの友達にはそのことを秘密にしていた。 変な奴だと思われたくなかったからだ。

高校・大学時代、そんな学問の本を読んでいることがバレてもいいように、私は普段から社交的に生活していた。 「遊びが好きで友達が多いのに、そんな本も好きなんだね。多趣味!」と思われるように。

これが、もし、社交的でなかったら、「遊びも知らず独りぼっちだから、そんな本を読んで現実逃避してる。変な奴!」と思われる危険が増すであろう。  

この空気感は、愚民政策の成功がもたらした。   愚民政策を推進するにあたって、大企業の後押しもあった。 政府や大企業は、中学・高校生が人文・社会科学の学術書を読むことを好まない。 暗記中心の受験勉強をせずに学問的な思考をされたら、愚民政策が効かなくなるからだ。

学校は、政府や大企業にとっての「良き学生、良き技術者、良きサラリーマン、良き労働者、良き消費者、良き従順者」を大量に生み出し、日本は工業社会に適応できたのである。

おかげで日本人の生活レベルは向上したのだから、愚民政策が全部悪いとは言わない。 だが、工業社会を達成した後は、無残な結果となっている。 一昔前までは、日本の国際競争力はトップレベルにあったが、今では30位前後をウロウロしているありさまだ。

国際競争力が低くても、国民の幸福度が高ければいいのだが・・

日本は国民の幸福度が低いことで有名である。  

未来は「自分で考える」仕事以外はアウトソーシングされる

IT・ロボット・人工知能が発達すればするほど、日本の労働者・技術者・サラリーマン・ホワイトカラーの仕事は、機械やコンピューターに奪われていくことになる。

ロボット

そして、人件費の安い外国へ仕事がふられていく。 日本では、起業するか、マネジメントの仕事やクリエイティブな仕事、希少価値がある仕事、高付加価値をつける仕事をしないと、いい収入を得られなくなるのだ。

つまり、愚民政策を受けた日本人の多くが苦手とする「自分で考える」仕事をしなければ、いい生活ができなくなる。 外国へ出稼ぎに行く日本人が増えるだろう。  

私自身、愚民政策世代なので、正直、「自分で考える」ことは苦手である。 苦手だからこそ・・・・ 「自分で考える」機会が少しでも増えるように、努力してきた。

本来、「自分で考える」ことは楽しいはずなのに、「自分で考える」ために努力する必要があるのはおかしい。 だが、意識して努力しなければ、「自分で考える」ことは難しいのだ。  

あなたは、「環境管理」という言葉を知っているだろうか?

大企業が運営するファーストフード店は、エアコンの温度や椅子の硬さ、テーブルの狭さなどによって、客の回転率を上げている。 空腹を満たすまでは心地よく座っていられるのだが、ハンバーガーを食べたら自然と店を出たくなるように計算して店舗は作られているのである。 客は、自分の考えで行動していると思っているのだが、実は、企業の思惑通りに動かされているのだ。  

現代社会は、人の感情・行動をコントロールするノウハウが日々蓄積されている・・・。

 

結論

人は、自分の考えで行動しているとは限らない!

 

小室 真司

About The Writer

小室 真司
年 代 : 1970年代前半 生まれ
性別 : 男性
専 門 : メディア事業運営
趣 味 : 人文社会科学系の読書
好きな言葉 : メディアはメッセージである

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