グーテンベルクという名の男を知っているだろうか?
そう、活版印刷技術の発明をした有名な人物だ。 大量の書物を短時間で複製する印刷技術の発明は、「本や新聞という商品が普及した」という程度のインパクトではない。 現代社会の枠組みや国の序列に関わる、重大な出来事なのだ。
この重要なことを、穴埋め問題形式で出題したいと思う。 よければ挑戦してみてほしい。
小室真司「メディア学入門 問題集」からの出題
ヨハネス・グーテンベルク
ルネサンス期における三大発明は、火薬・羅針盤・活版印刷術である。 [① ]世紀中頃に活版印刷術を発明したのは、ドイツ出身のヨハネス・グーテンベルク。
活版印刷術の普及
活版印刷術の普及は、書物を増量させた。 印刷された本により、知識の定着化と継続的な蓄積が可能になる。 それまで、知的な書物は知識階級の知識人のみが読めるだけであったが、字が読める中産階級にも「知」や「学問」が広がっていくことになった。
やがて、本やパンフレット・新聞といった商品・広告を販売する組織や会社ができ、娯楽的な書物も一般大衆に向けて出版されるようになる。 印刷本には文字だけでなく、分かりやすい絵や表なども掲載していた。 この新しい出版印刷文化は、一般大衆の識字率向上や黙読の普及をもたらし、古代・中世の聴覚中心の社会から[② ]中心の社会へと変化させた。
ヨーロッパに活版印刷術が広がった理由
ヨーロッパに活版印刷術が広がった理由には、文字の特性にもある。
アルファベットは表音文字のため、使われる文字数が少ない。 つまり、1文字づつバラバラにできる金属製の組み換え可能な活字による活版印刷術に向いているのだ。
[③ ]文字である漢字などは数万字もあるが、アルファベットは大文字・小文字・数字・記号類をあわせても100字程度ですむ。
この差は、書物を作るコストの差になり、科学や技術、ノウハウや知識の普及の差となる。 ヨーロッパでは、多人数と知を共有することが簡単になった。 このことは、ヨーロッパの地位の向上、それまでの先進国であった中国(明・清)の地位の低下とも関係してくるのである。
印刷術の発明がもたらした新しい共同体
印刷本は、知の普及を促進させて科学革命や産業革命を引き起こしただけでなく、知識人と職人・商人・一般大衆を新しい関係で相互に結びつける媒体にもなった。 住む地域や職業・階級で違う言葉を使っていた人々が共通語を持つようになり、文化的・地域的にバラバラの人達、面識のない者同士を繋げていく。
[④ ]の誕生である。 共通の言語を通して人々は、自分自身を国民として認識し、[⑤ ]という共同体に所属する一員と思うようになっていった。 印刷本で使われる共通語は、[⑥ ]となったのだ。 そして、近代から現代に見られる政治的な枠組みの[⑤ ]や国境が、できていくわけである。
共通語で書かれたメディアは、改革運動を広める
多人数が理解できる母[⑥ ]ができたことにより、革命が起こりやすくなる。 ビラや本などの出版物で、思想や批判を持続的に広範囲へ知らせることができるようになるからだ。
例えば、ルターの[⑦ ]革命は、大量の出版物が改革運動の原動力となった。
上記の出題は、下記の本を参考にして作られた。 メディア スタディーズ・メディア学を勉強するのにいいので、お勧めする。
伊藤守 編著 ミネルヴァ書房 2015-05
吉見俊哉 有斐閣アルマ 2012-12-15
解答
①15 ②視覚 ③表意 ④国民国家 ⑤国家 ⑥国語 ⑦宗教
メディアは様々な改革を引き起こし、社会の常識や価値観を変えていく・・・。
結論
人の常識・価値観を変える「メディア」を知るべし!
小室 真司