先日、ある若者から「メディア学の参考書や本で、有名なのは何ですか?」と聞かれた。
私は即答した。 「それはマクルーハンのメディア論だよ」
しかし、彼はマクルーハンのことさえ知らなかったようだ。
私は驚いた。 彼は社会科学系の大学を卒業しているにも関わらず、知らないのである。
私は学生時代にメディア学を専攻していなかったが、社会学や政治学の講義でマクルーハンの「メディア論」が紹介されていたのを覚えている。 大学の先生は「有名だから、必ず読むように」と言っていたので、私も学生時代に読んだ。
衝撃的だった。 私にとって難しい本だったから、全部を理解することはできなかったが、視界が広がったような・・・、社会をより理解できたような気がしたものである。
この投稿を読んでいるあなたは、マーシャル・マクルーハンのことをどれだけ知っているのだろう?
気になる。
マクルーハンについての問題を出すから、よかったら解いてみてほしい。 私は、自分の事業に協力してくれているスタッフやクリエイター達用に、メディア学の問題集を作っている。 そこから出題してみる。
小室真司 「メディア論入門テキストの問題集」からの出題
マクルーハンは、1960年代の初めにメディア論の領域に登場し、有名になった人物である。 メディアと人間の [① ] 様式の関係についてのユニークな分析によって日本でマクルーハン・ブームを起こした。
マクルーハンは、もともとメディア学を専攻としていたわけではなく、[② ] 学研究から始まり、ルネッサンス期の [③ ] 学、特に修辞学を専門としていた。 出身は [④ ] である。
彼は、「[⑤ ] 」を人間の [① ] 器官が、<拡張>(extention)されたものとして捉えた上で、私達の周りに存在するいろいろな [⑤ ] が、相互にどのような関係を築きあげているかによって人間の [① ] 様式が左右され、その結果、人間関係のあり方や人間が行動するときのパターンや基準が作り出されると主張した。
そして、[⑤ ] 的環境が人間の [① ] 様式をどのように統制しているのかを考察するとき、それぞれの [⑤ ] を「メディア」と呼んだ。
つまり、彼にとっては衣服も自転車も文字も電球が発する光もすべて「メディア」となるのだ。
こうした考えから、彼は、「われわれの [⑤ ] が車とか文字とか貨幣とかのように移動速度の [⑥ ] ものであるかぎりは、それぞれの [⑤ ] が独立した閉じた系であっても、社会もわれわれの身体もそれを許容でき」たのだが、
電子メディアが発達した時代においては「視覚・聴覚・運動などが [⑦ ] 的に伝達されてしまい、それが世界規模で行なわれる」ため、「人類の歴史において未だかつてなかったような危機を作り出している」と指摘し、メディアと人間の [① ] 様式の関わりについて、芸術作品、文学作品、思想家の著作などを題材に考察を行った。
彼の、「メディアは [⑧ ] である」という言葉は有名である。 この言葉の意味は、「どんなメディアでもその『 内容 』はつねに [⑨ ] のメディアである」ということであり、たとえば「書きことばの内容は話しことばであり、印刷されたことばの内容は書かれたことばであり、印刷は電信の内容である」。
彼が問題としているのは、メディアが何を伝えているかではなく、あるメディアが「既存のプロセスを拡充したり加速したりするときの、デザインあるいはパターンが、心理的および社会的にどのような結果を生むか」ということであり、「メディアの内容がメディアの性格にたいしてわれわれを [⑩ ] にするということが、あまりにもしばしばありすぎる」と主張した。
上記の出題は、下記の事典を参考にして作られた。 メディア学を学ぶ私にとって、とても便利な事典であり、参考書としても最適である。
便利な メディア学入門参考書(事典)
メディア用語基本事典 渡辺武達 山口功二 野原仁 世界思想社 2011-01-17
解答
①知覚 ②文 ③英文 ④カナダ ⑤技術 ⑥遅い ⑦瞬間 ⑧メッセージ ⑨別 ⑩盲目
できれば、半分は正解であってほしい問題である。
マクルーハンの「メディア論」は、1964年に発行された本だが、今だに読み継がれている。 ぜひ読んでほしい。
メディア論 人間の拡張の諸相 マーシャル・マクルーハン みすず書房 1987-07-01
結論
マクルーハンの「メディア論」は、現代人なら必ず読むべし!
小室 真司